2008年02月07日
「花なら赤く 空なら青く」第一話
「花なら赤く 空なら青く」第一話
いつまでも暑いと思っていたら、空には真っ白な入道雲が膨らんでいる。
雲ひとつない夏空は、あまりにもまぶしすぎた。
まつげで日差しをはじきながら、入道雲を見た。
いきなり、入道雲から飛行機が突き抜けた。
そこから飛行機雲が一直線に線を描き、遠くへ消えていった。
ふっとため息をついたら、まだ夏の名残を残した暖かい秋の風に背中を押された。
自然に歩き出した。
今日で三十歳になった。
いつまでも二十代だと思いながら、結婚は二十代にはと思っていたが、
そんな気配もないまま、秋の気配を感じてしまった。
「仕事が彼氏」なんて、彼氏のいる友達や同僚の男の子には
強がって見せているけど、シャカリキに仕事をしても、心は癒されない・・・。
家に帰ったら、ふるさとの親が送ってくれた漬物をおかずに、
食パンをかじることもある。当然おいしくない。
最近目元のからすの足跡が気になって、笑わないようにしている。
笑わないのがよくないことはだれよりもわかっているけど・・・。
彼氏と呼べる人がいなかったとはいえないけど、
でも、結婚までに至るような男性は現れなかった。と思う。
惰性で付き合うことにも疲れるし、かといって素敵な男性が
いないのも疲れる。というか癒されない・・・。
自分の身勝手を自分でも知っているし、直そうと思っても、
やっぱり叱ってもらう人が欲しい。
ある本で、「花なら赤く 空なら青く」ってエッセーがあったけど、
女性なら女性らしく、男性なら男性らしくって意味みたいで、
なるほどと思ったけど、自分が女性らしくするための答えが見つからない。
だから男性らしい男性に会えないことも納得せざるをえない。
それにしても宮崎の街は、暑い。空は青いし、道に咲く花は赤い・・・・。
少し色づいた街路樹の葉を見ながら、ゆっくりと歩く。
いつかこの葉も落ちるときがくると思った。
花も赤いときがあれば、いずれ枯れる。
どうせ枯れるなら、きれいに咲くときこそ、爛漫と咲きたい。
今の自分は、つぼみなのだろうか?
それとも、花が咲いているのだろうか?
それとも、枯れつつあるのだろうか?
花が赤く咲き乱れるときは、限られている。
でも、人間は自分で咲きつづけることも、自分で枯らすこともできる・・・。
何度も咲くことができる。
オープンバールのウィンドウに自分が写っている。
まんざらではないんだけど・・・・。
と思ってみていたら、中から視線を感じた。
一瞬で焦点をウィンドウから中にあわせると、
中から小さく手を振っている人がいる。
男の人・・・。誰・・・・・?
笑っている・・・・。
あれぇっ!確か・・・・。
あっ!
えっ!
うそっ!
気になるのなら第二話につづく・・・。
。。。。。。
気になります。
このコメントを下さった方へ。
第二話、お待ちしております。
- by カナザワエイジェント
- at 11:38
comments
第二話
「村上君?・・・・うん、間違いない・・・あの目・・・村上君だ・・・。」
オープンバールの中から手を振っていたのは、
大学時代の体育会の同級生の村上君だった。
私が気付いたことがわかって、村上君は手招きをした。
だれか他の人に手を振っているなら、そんなかっこ悪いことはない。
私は後ろに誰もいないことを確かめて、
無言で自分を指差して、「私のこと?」なんて笑いながら聞き返した。
彼は笑いながら、二回ゆっくりうなづいた。
でも心配だから、私は後ろを振り向いた。
誰もいない・・・。よかった・・・。
村上くんは私を見ている。
私は、もう一度焦点をウィンドウにあわせて自分を見た。
「私・・・イケテルかな?」
**************
バールの中に入ると、ほんの少し湿った涼しい空気が私を包んだ。
店員さんが「いらっしゃいませ」と声をかけてきた。
「先に席にバッグ置いていいですか?」
「どうぞ。」
ちょっと背を伸ばして、村上くんのほうへ歩きだした。
背中に自分の汗を感じた。でも背筋は伸ばしつづけた。
ヒールを履いている足の痛さを忘れている・・・。
「村上くんだよね!」
「久しぶり!」
「久しぶりだネ!」
「うん。よく私がわかったよね!」
「そりゃあ分かるよ。まあとにかく飲みのも頼んできたら?」
「そうする。バッグ置いておくね。見てて!」
「大丈夫。見ておくよ。」
「ちょっと食べていい?」
「いいよ。早く行ってきなよ。」
「うん。」
******************
ここのオープンバールは、シナモンロールとアイスカフェラテの評判がいい。
時々会社の仕事で近くにくると、時々注文していた。
今まで十回以上は来ているのに、村上くんと会ったことはなかった。
私定番の二つのメニューを頼んで、席に戻った。
当たり前のように、村上くんの隣にトレイを置いて、席に座った。
その間村上くんは、私をずっと見ていた。
「ホント久しぶりね。」
「何年ぶり?」
私はオシボリで手を拭きながら、
「二十二だったから、八年ぶりになるのよ。」といった。
「そうだよなあ・・・。八年ぶりかあ。元気だった?」
「元気といえば元気だったかな。村上くんは?」
「僕はずーっと元気だったよ。」
「村上くんだもんね・・・・・・」
昔の同級生なのに、目を見るのがちょっと恥ずかしい・・・。
*******************
私と村上くんの出会いは、大学の大学祭実行委員会のときだった。
当時私は、体育会テニス部に所属していて、
いつも日焼けした顔で、構内を歩いていた。
それに、部活ではクレーコートの土ぼこりと汗にまみれて、
色気なんて何にもなかった。
大学祭実行委員会は、体育会系のクラブ員で構成されていて、
実行委員会には各体育系クラブから部員がいわゆる「人柱」で出て
仕事別のそれぞれ部署に配属されることになっていた。
私は、テニス部からの人柱として、一年生のときに委員会に出された。
大学祭実行委員長とか上の人たちは、三年生。
各部署の責任者は二年生。
そして私たち一年生は各部署の部員って言うことで、
二年生のお手伝いをしていた。
そのときに村上くんは、私より後に、アメフト部から来た。
そこで同じ部署の担当になって、一年生同士仲良くしごとをしていた。
当時の実行委員会は体育会で占められていたので、
礼儀やお酒の席での慣わしは厳しく、
男女関係なく、頼まれていたことができてなかったりすると、
二年の先輩にこっぴどく絞られた。
かく云う私も一緒で、女性扱いされた覚えは全くなかった。
説教も聞いたし、正座もさせられたし、ビンタもくらったこともある。
そのときいつも村上くんも私の横でしかられていた。
だから村上くんとも男とか女とか関係ナシに同期として
一緒に学食でご飯を食べたり、
それぞれの下宿にあそびに行ったりしていた。
夜十二時をまわると村上くんがいつも銭湯から出てくる時間で、
それから村上くんから私に電話がかかってきて、車で遊びに出かけた。
車で出かけないときには、長電話をしていた。
五時間とかしていたこともあった。よく、あんなに話ができたものだと思う。
ほとんど毎日そんな感じだった。
だけど、結局つきあうとか・・・そんな関係にはならなかった。
お互い体育会系だから、恋とか愛とかいうのが照れくさくて・・・。
でも当時放送されていた恋愛ドラマのことなんかを
さも、恋愛のエキスパートぶって話をしたこともあった。
「男女間に友情は成立するか。」なんてことを
偉そうに話をしたこともある。
あのころの自分達がすごい輝いていたように思えた。
*************
ストローの紙の端をちぎり、ストローをアイスカフェラテに差した。
「村上くんは、いつも、この店使うの?」
「はじめてだよ。」
「私は、何回もつかっている・・・。」
「ふーん。やせた?」
「なによ!いきなり!」笑いながら答えたけど、ちょっとうれしかった。
「それに、もう日焼けしていないよね。」
「いつまでも、テニスやっているわけじゃないからね。」
「きれいになったよ。」
「からかわないでよ。」
「からかってないよ。」
というと、村上くんは、タバコに火をつけた。
相変わらずタバコを吸っていた。でも銘柄がかわっている。
「タバコ変えたね。」
「うん。よくわかるね。」
「だって、よく買いにいかされたもの。」
「そうだったっけ。」
「都合悪いことは、わすれるんだから・・・。かわってないね。」
ラテを一口飲んだ。
「今、村上くんは何してるの?」
「喫茶店でコーヒー飲んでる・・・・。」
「じゃなくて、どんな仕事をしてるの?」
「聞きたい?」
「だから聞いてるんじゃないの!・・・。」
「あのね・・・・」
村上君の仕事が
気になるならば第三話につづく・・・